2010年3月23日火曜日

IPCCの間違い!?

今日のlunch seminarはIPCCについてだった。Wageningen大学にもIPCC等に関わる大物の先生方がいる。彼らが、独自でお昼のセミナーを開いた。メールは大学の人全員に送られ、会場は講義室を三つぶっ続けにしたが、それでも人であふれかえっていた。もう、この時点で、うちの大学との違いに驚いた。研究院アワーとかやってるけど、参加者がすごく少ない。講座でやっているセミナーに関しても同様のことが言える。科学全体に対するモチベーションの差を感じる。
今回は、IPCC Reportが作られる仕組みについて説明があったのち、最近オランダの新聞で取り上げられた記事に間違いがあることや、IPCC Report自体もWorking Groupによって引用に間違いがあることが指摘された。local areaで得られた結果をglobalな話に使っていたり、有意かそうでないかの解釈がおかしかったり、といった例が挙げられた。日本政府はすでに間違いを指摘しているというコメントもあった。ヒマラヤ氷河の話などはもうすでにニュースに取り上げられるくらい有名な話ではある。問題点としてreportのreviewerが少ないことが挙げられていた。greyなreviewと言われているIPCC reportに対して、集まった科学者たちは多いに議論していた。このような場が大学内に設けられ(ランチ中)、皆が科学と社会とのつながりを再認識することはとても重要なことだと感じた。日本の大学は研究施設としての役割を全うしているのだろうか?

癒し

最近、疲れている。というのも、土日は働かないはずが、予定通りに行かず、土日も大学に行く→でも進まない→平日も夜遅くまで→でも進まないという悪循環にはまっているから。たぶん他の日本人からみたら、あたりまえじゃん!ってかんじのサイクルかもしれない。でも、私はこのサイクルが嫌い。できれば、土日は休みたい。だって、労働時間に反比例して効率が低下するから。
こんな私の毎日だが、唯一の楽しみがとある方のブログを読むこと。なんとも癒される。なぜかはわからないけれども、オランダでの毎日の終わりの日課になりつつある。こんな風に生きられればいいな、とよく思う。

2010年3月20日土曜日

Excursion & Practical in the Forest

さて、講義もいよいよ後半に突入です。場所がフィールドに移ります。3月19日(金)午後からオランダ最大の国立公園De Hoge Veluweの横にある(含まれてるのかな?)Ugchelse Bosに行きました。2週間前にも他の場所でエクスカーションがあったのですが、一時帰国中で参加できなかったので、今回が初めてのオランダの森体験でした。

生態学的な背景は以下の通り。森林内にGapができると森林構造が変化し、林内の微気象も変化する。Gapによって、光の有効性や温度が増加したり、土壌が撹乱されることで樹木は更新の機会を得る。定着後、成長し、高密度になり、種内や種間の競争の結果、将来の林冠の種構成が決まる。しかし、中型や大型の哺乳類(rabbit, hare, red deer, roe deer)が更新段階の種組成を劇的に変化させ、故に、森林構造(長期間の更新の抑制)と種構成(選好種の被食)に大きな影響を与えると予想される。今回のfield tripでは、Ugchelse Bosのsmall-scale regeneration unitsを訪れ、更新における種構成や密度に対するGapと大型被植者の排除の効果を学ぶことを目的とした。

Ugchelse BosはState Forest Service(Staats Bos Beheer, SBB)が管理する1440 haのUgchelen-Hornderloo forest areaの一部である。エリアの中心部はoak(Quercus robur)やPinus sylvestrisが混在する雑木林として森林が残存している。最後の伐採は1925年から33年の間に行われた。
1890年まで、雑木林は大きなヒース林に囲まれていた。その後、ヒース林はより生産的な森林へと植林化がすすめられた。Pinus sylvestrisno人工林は19世紀末から20世紀初めに作られ、Pseudotsuga menziesii, Larix kaempferiや他の針葉樹は、Pinusの後に二次更新として1940から1950年の間に主に植林された。1950年から1990年にこのエリアは禁猟地区として保護されたため、red deerやwild boarの大きな個体群が保たれた。1990年ごろまでには、より自然な生態系の創生を強調する多機能な森林を作る方向へと管理体制が変化していった。目的は、大きな自然保護地区の一部として、native tree species(主に広葉樹)の長期的な森林を作ることである。Wild boar, red deer, roe deerといった大型哺乳類は今現在も高密度で生息している。すべての動物個体群は狩猟によって調節されている。State Forest ServiceはEuropean Bison (Bison Bonasus)の再導入の可能性を調査しているところである。

今回見学したのは次の通り。1)Thinning experiment and exclosure, 2)Mosaic method, 3)Game-meadow, 4)Daglas fir stands, removed in 1998、それぞれの場所で被食の程度や更新、種組成、森林構造、ギャップの閉鎖具合等を観察した。修士学生たちは、どのような森林にするにはどの方法が有効なのかについて各場所でdiscussionを行った。雑木林を保つために最良の方法とは何だろうか。日本のように自然林の多く残っている国とは森林に関する価値観自体が違うように感じた。日本の里山保全に近いのかもしれないが、目指すものを明確にしなければ、持続的な管理は難しいかもしれない。私が見た限りではシカ柵の中以外で実生の更新は見られなかった。その点では現時点での問題点は明確かもしれない。しかし、優占するoakもまだ80歳ぐらいなので、次の世代へと変わるころまでに種構成等に変化が起こるかもしれない。来週から、ここでpracticalが始まる。修士学生たちが何を感じ、どうまとめるのかが楽しみである。

今回の見学中にふと日本で読んだ本のことを思い出した。それは、里山保全を批判する本だった。里山保全を推進する人たちは郷愁の思いが強い、里山は作られた自然だから保つ必要はない、昆虫種もかつてはいなかったものばかり、などの批判が書かれていた。では、自然林のないオランダではどうだろうか。この雑木林も里山のようなものではないだろうか。”non naturalな”森林は本当に保つ必要はないのだろうか。都会の便利さを得ても、時には喧噪を逃れて森林に憩いを求める人は多い。雑木林や里山は人の生活により近い森林であり、もしかすると一般の人からすれば、これがnatural forestとなる日がくるのかもしれない。私は、里山を保つ必要がないとは思わない。

2010年3月13日土曜日

ワーゲニンゲン大学講義

twitterにはまっていたので、blogを書くのを怠ってしまった。

3月から始まった私の滞在先のForest Ecology and Management Groupの講義について書きたいと思う。私は今週の火曜日から参加し始めたので、いまいち事情は分かっていないけど。
今、うちのグループには、group boss 1人、professor 1人、assistant professor 3人、lecturer 1人、topPD 1人、PD 2人、教育係とアシスタント 2人がいます。ここのPDは、日本のPDとは違い、完全に先生で、助手とやってることは変わりません。ちなみに私のこっちでのボスはTop PDとかいう意味不明の役職についています。上の計11人が学部生用と修士生用の講義を担当。1学期の間ずっと午後はこの授業。だから、「日本みたいに今日は水曜だから、、、」とか考える必要はありません。この方式ってはじめは、えっ、と思ったのですが、学生は毎日同じ授業だから内容を覚えやすいし、先生も自分のグループの担当時期を外せば、海外に調査にいけるという利点が多いように思う。まぁ、不利点は言うまでもなく、準備が大変、ということでしょう。修士学生用のは講義が二週間、そのあとにpracticalがあって、自分で研究計画を立て、実践し、最後に発表とレポートを書くらしい。まだ講義中なので、詳細はよくわからないけど。この前、講義で疲れ果てた先生の一人が愚痴のように、これからまだpracticalがあって、云々言っているのを聞きかじっただけなので。
今週出た講義の内容は、すごく充実していた。もちろん内容は森林生態学について。functional traitsから生態生理、architecture model,population dynamics, grobal modelまで、英語の分厚い教科書に載っているような内容を自分たちのgroupの関連研究を例にいれながら進めていた。これこそ、世界の第一線で研究している人たちがいっぱいいる研究室の醍醐味かもしれない。毎週のように「論文でたよ、enjoy reading」メールが届くのはダテではない。(ってか、いつ書いているのだろうか。しかもEcologyとかJournal of Ecology, New Phytologistとかメジャーなところばっかり。。。) 講義で面白いのは、いろんな論文を引用していて、例えばnatureで199?にこんなことが言われていたけど、実はこうゆう見方をするとこれは間違っていることがわかる、とか、すべての研究が正しいわけではない、ということも教えてくれる。もし、自分が森林生態学の専門でなくても、森林に関わることをしているのならば聞いておいて絶対に損はしない講義だと思った。現に、他の研究室のPDやPhDとかも聞きにきていた。悪い点を挙げるとすれば、内容が詰まり過ぎで初めて聞く人にはついていくのが厳しいかもしれない。予習が必要だと思う。何と教科書は電話帳くらいの厚さで、先生たちが作った原稿がバインダーにとまっているだけ、というすごものである。

来週からは、生態学から応用へ、保全についての講義が始まる。ボリビアやアフリカの話がメインのはずである。楽しみにしている。