2010年3月20日土曜日

Excursion & Practical in the Forest

さて、講義もいよいよ後半に突入です。場所がフィールドに移ります。3月19日(金)午後からオランダ最大の国立公園De Hoge Veluweの横にある(含まれてるのかな?)Ugchelse Bosに行きました。2週間前にも他の場所でエクスカーションがあったのですが、一時帰国中で参加できなかったので、今回が初めてのオランダの森体験でした。

生態学的な背景は以下の通り。森林内にGapができると森林構造が変化し、林内の微気象も変化する。Gapによって、光の有効性や温度が増加したり、土壌が撹乱されることで樹木は更新の機会を得る。定着後、成長し、高密度になり、種内や種間の競争の結果、将来の林冠の種構成が決まる。しかし、中型や大型の哺乳類(rabbit, hare, red deer, roe deer)が更新段階の種組成を劇的に変化させ、故に、森林構造(長期間の更新の抑制)と種構成(選好種の被食)に大きな影響を与えると予想される。今回のfield tripでは、Ugchelse Bosのsmall-scale regeneration unitsを訪れ、更新における種構成や密度に対するGapと大型被植者の排除の効果を学ぶことを目的とした。

Ugchelse BosはState Forest Service(Staats Bos Beheer, SBB)が管理する1440 haのUgchelen-Hornderloo forest areaの一部である。エリアの中心部はoak(Quercus robur)やPinus sylvestrisが混在する雑木林として森林が残存している。最後の伐採は1925年から33年の間に行われた。
1890年まで、雑木林は大きなヒース林に囲まれていた。その後、ヒース林はより生産的な森林へと植林化がすすめられた。Pinus sylvestrisno人工林は19世紀末から20世紀初めに作られ、Pseudotsuga menziesii, Larix kaempferiや他の針葉樹は、Pinusの後に二次更新として1940から1950年の間に主に植林された。1950年から1990年にこのエリアは禁猟地区として保護されたため、red deerやwild boarの大きな個体群が保たれた。1990年ごろまでには、より自然な生態系の創生を強調する多機能な森林を作る方向へと管理体制が変化していった。目的は、大きな自然保護地区の一部として、native tree species(主に広葉樹)の長期的な森林を作ることである。Wild boar, red deer, roe deerといった大型哺乳類は今現在も高密度で生息している。すべての動物個体群は狩猟によって調節されている。State Forest ServiceはEuropean Bison (Bison Bonasus)の再導入の可能性を調査しているところである。

今回見学したのは次の通り。1)Thinning experiment and exclosure, 2)Mosaic method, 3)Game-meadow, 4)Daglas fir stands, removed in 1998、それぞれの場所で被食の程度や更新、種組成、森林構造、ギャップの閉鎖具合等を観察した。修士学生たちは、どのような森林にするにはどの方法が有効なのかについて各場所でdiscussionを行った。雑木林を保つために最良の方法とは何だろうか。日本のように自然林の多く残っている国とは森林に関する価値観自体が違うように感じた。日本の里山保全に近いのかもしれないが、目指すものを明確にしなければ、持続的な管理は難しいかもしれない。私が見た限りではシカ柵の中以外で実生の更新は見られなかった。その点では現時点での問題点は明確かもしれない。しかし、優占するoakもまだ80歳ぐらいなので、次の世代へと変わるころまでに種構成等に変化が起こるかもしれない。来週から、ここでpracticalが始まる。修士学生たちが何を感じ、どうまとめるのかが楽しみである。

今回の見学中にふと日本で読んだ本のことを思い出した。それは、里山保全を批判する本だった。里山保全を推進する人たちは郷愁の思いが強い、里山は作られた自然だから保つ必要はない、昆虫種もかつてはいなかったものばかり、などの批判が書かれていた。では、自然林のないオランダではどうだろうか。この雑木林も里山のようなものではないだろうか。”non naturalな”森林は本当に保つ必要はないのだろうか。都会の便利さを得ても、時には喧噪を逃れて森林に憩いを求める人は多い。雑木林や里山は人の生活により近い森林であり、もしかすると一般の人からすれば、これがnatural forestとなる日がくるのかもしれない。私は、里山を保つ必要がないとは思わない。

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